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2004.11.12

「号泣する準備はできていた」江國香織

江國香織ってこういう作家だったのか・・。

彼女の作品は「冷静と小説のあいだ Rosso」しか読んでいなかった。彼女のファンは皆一様に、彼女のよさが出ていない小説だと言っていたので、「号泣する準備はできていた」は、私にとって始めての江國香織作品といってもいい。

恋愛を軸に、仕事に生き方に迷ったり傷ついたりする人々を描く、恋愛小説の名手。そんなふうに思っていた。ほら、けっこういるでしょう?女流恋愛小説家。江國香織もきっとOne of them 。
悪い意味ではない、私はそういう小説が嫌いじゃないのだ。

「号泣する準備はできていた」だから私も、ちゃんと準備したのだ。いつもは子供のよだれやら鼻水やら拭いてるミニタオルを横に、うんと泣くつもりで、極上のせつない恋愛小説と思って、読み始めたのだ。

読み終わって心に広がったのは、凪の海。

狂おしい恋も、甘すぎる密な時間も、別離に伴う心の流血も、ing形で語られる感情の激しい高ぶりは、この小説にはない。
描かれるのはもっと静かな日常。他人からみれば、どうってことのない普通の日常。
日常に交錯するひそやかな感情。ほんの小さなドラマ。

恋をしていたり、失ったりする瞬間だけがドラマではない、人生でもない。

失ったものを抱え、ときどきそれを思い出し、悲しみを改めて味わったり、懐かしがったりするほうが、人生においてはよっぽど長い。
自分の人生をどんな風に抱えて、日常を生きていくかにも、その人なりのドラマがある。

凪いでいても海は海。かつて荒れ狂ったこともある。これから荒れることもある。そして今だって、波は穏やかに風にそよいでいる。


今の私や、これからの私に思いを馳せる。
恋に夢中になっていたころも、馬車馬のように働いたころも、歓喜したことも、傷だらけになったことも、いったん過ぎ去ってしまった。
結婚して、子供を産んで、安定的に幸福な日常の中で、わたしは時々、いろんなことを思い出し、せつなくなったり淋しくなったり、願ってみたりする。心はちゃんと揺れている。

でも私は泣いたりなんてしないだろう。
ましてや号泣なんてしないだろう。
号泣するに十分な、いろんなことがあったにもかかわらず。

号泣する準備はできていた


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Tracked on 2004.11.16 at 12:07 PM

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