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2006.05.24

「覆面作家の夢の家」北村薫

本読み日記。

北村薫の小説は、いつもあまり「極悪人」は出てこない。
類型的な犯罪者が出てこないというべきか。

時々登場するのが、暗黒で、邪悪な心をもった人。
または刑法では裁けない、だけど、よくない人。


今回私はハッとさせられた。


「覆面作家」シリーズは、謎解きであり、同時にラブコメでもある、楽しいシリーズなんだけれど・・・。
この本に納められたある短編にドキリとした。

謎解きを楽しみにしている未読の方のために人の名前を伏せて引用する。


覆面作家こと千秋さんが言う。

「Aさんが、Bさんの立場になれる人だったら、こんな事件は起きてなかったろうな。」

「Cさんも、Bさんも、両方とも無事だったろう。でも、Aさんはそんなこと、一瞬も考えないだろうな。ただ驚き、怒鳴るだけだ。自分の人生を、Bさんが目茶目茶にしたと思うだろうな。」


Aさんは刑法ではまったく裁かれない。

Aさんは、ただ正論でものをいい、ばっさりと割り切って生きる人で、人の心に寄り添わない。切って捨ててしまう。
話は簡単、たいしたことではない、と言い捨ててしまう。


・・・・・・私もAさんタイプじゃなかろうか。

そんなことでクヨクヨしてどうするの?
あなたが悩むべきことじゃないわ。
あなたが悪いわけじゃないでしょう。
もっと割り切って生きていかないと。
さあこの話はこれでおしまい、
次、いってみよー!

ってな具合。

言ってそうだよなー私。


でも、人間の心はそんなにデジタルに切り替われない。
割り切れず、背負ってしまう人のほうが多い。
背負い疲れてつぶれてしまう人も多い。


私は本当は、その心の荷物をいっしょに背負ってあげるような接し方をすべきなんだろう。


相手の気持ちをよく理解して、心に寄り添ってあげるべきなんだろう。

世の中にはたくさんの犯罪があって、手を下した者だけが犯罪者として裁かれるけれども、その人たちの心に寄り添ってあげられる人がいれば、彼らも犯罪を起こさなくて済んだのかもしれない。

世の中には自殺してしまう人もいるけれど、もし心寄り添うように接してくれる人がいれば、彼らは自殺しなくて済んだかもしれない。

北村薫は、人の心に寄り添わず他人を追い詰めてしまう、罪には問われぬが情の無い人を、この本のなかで注意深く責めていると思った。


私は責められていると感じた。

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「覆面作家の夢の家」北村薫


***追記***

リョースケと千秋さんの関係についても見事に「オチ」がついてます。
お楽しみに!

********


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