« 小林麻央ちゃんに学ぶ | Main | がんばれ!榊 東行!「ホーム・ドラマ」 »

2006.10.23

「リトル・バイ・リトル」島本理生

本読み日記。
島本理生の「リトル・バイ・リトル」はとてもよい作品。
「ナラタージュ」よりも好きだな。

18歳の女の子・ふみの毎日。
とくに大きな事件は起きない。
母親が2度目の離婚をし、父親違いの妹とくらす18歳。
高校を卒業したが、経済的な理由で大学進学をとりあえず1年のばし、
自分で学費をためたり、生活費の足しにするためにアルバイトを始める・・。
そんな毎日のなか、書道教室の先生との交流や、
キックボクサーの少年との出会いがある。

本当に、そんだけなんだけど、
読んでいてなんとなく落ち着く。励まされる。

ふみはいわゆるフリーターだし、
これからの生活にも不安定要素が多すぎる。
でも、周囲の人々との関わりの中で、
本当にちょっとずつ、人は成長する。
何気ないことに、人は元気付けられ、
やっていけそうだと思う。


著者の島本理生はあとがきに書いている

「明るい小説にしようと、最初から最期までそれだけを考えていた。淡々と流れていく日々を照らす光を書きたかった。」

その試みは、見事に作品に反映されている。

主人公ふみは、暗い夜の海に、たよりないボートで漂流しているようなものだ。
でも遠くで灯台の光が彼女を照らしている。
だからなんとなく、安心している。
きっと、大丈夫だと。


私は2つの面で、この小説をすばらしいと思う。
1つは上に書いた、この小説のもつ世界観。
淡々と流れていく日々を照らす光の優しさ、に共感できたこと。
もうひとつは、イマドキの若いモンの生き方が、皮肉だけどよく描かれていることだ。

主人公は悪く言えば、あんまり考えてないというか、危機意識がない。
ふみは、大学に行くお金がないからなんとなーくフリーターになってしまう、しかし選んだ職種はビラ配りや看板持ちで、つまり他人との余計な接触が面倒なだけだ。
それで1年後に十分な進学費用を用意できるのか、家計を助けることができるのか、そういうことはまるで考えていないふうだ。考えたくないのかもしれないけど。

チャキチャキしたノー天気な母がいて、やさしいボーイフレンドができて、良い師である書道の先生がいて・・・。
自分はなんとかなるかなーと思っている。またはそう思いたい。


暗い夜の海にさまよう船にのっている主人公。
遠くから照らす灯台の光に安堵して、そのまま波に揺られているのだ。

灯台の光を目指して漕ぎ出そうとはしない。
朝日に向かって漕ぎ出そうとはしない。

この本は、青少年のための啓蒙書ではなく、小説なんだから、別にそれはそれでいいのだ。
私もこれ以上説教臭いことは言うまい。

私はむしろ、主人公ふみって、イマドキの若者の典型なのかなーと思う。
ふみが特段、人よりいい加減とか、人より投げやりという感じでもない。
お金がないから進学できないけど、それも仕方ない。
バイトはしなきゃだけど、面倒なことはしたくない。
これからどうなるかわかんないけど、とりあえず今日寝るところと食べるものはあるし、母も妹も、恋人も元気だし。
それでいいかなぁ・・・。と。

こういう感覚を、とても自然に、むしろ好意的に描いている島本理生の筆致が、とても優れていると思う。
ふみのことを優しく見守って生きたいような気持ちになる。

多分、私が書いていたら、ダメダメな18才の主人公というふうになって、もっと意地悪い話になっちゃったもの。


読んだあと、やさしい気持ちになれる本。
モラトリアムな若者たちにも、やさしいエールを送りたくなる一冊です。


406211669309

「リトル・バイ・リトル」 島本理央

|

« 小林麻央ちゃんに学ぶ | Main | がんばれ!榊 東行!「ホーム・ドラマ」 »

Comments

こんばんは、レアなるん♪です(笑)。

いやぁ、同世代というのもあるとは思うのですが、
私、Nolly Changさんの文章に、考じ方に
惹かれます・・・。

更新が楽しみなブログがひとつ増えて嬉しい!です。

いつの間にかイマドキの若者でなくなって、
イマドキの若者という言葉を使うようになった私ですが、
イマドキの若いモンが描かれたこの作品を
読んでみたいと思いました。

Posted by: るん♪ | 2006.10.23 at 07:20 PM

るん♪さんこんばんは。

イマドキの若者・・・ていう書き方は実は自分なりに抵抗もあったんだけどネ。イマドキの10代って書けばいいんだ!って気がついたのは後からでした。

Posted by: Nolly Chang | 2006.10.25 at 11:28 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19581/12384917

Listed below are links to weblogs that reference 「リトル・バイ・リトル」島本理生:

« 小林麻央ちゃんに学ぶ | Main | がんばれ!榊 東行!「ホーム・ドラマ」 »