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2006.11.20

映画「父親たちの星条旗」

戦争映画は苦手だ。みていてつらいから。
我がままで横柄だと言われようと、私は今、自分自身の心の平静のためにも、悲惨なことからはできるだけ目をそらしていたい。
ただでさえ、毎日のニュースでいじめ・虐待・自然災害の報道が続くのだから、映画館では美しかったり夢のある話をみたい。

なのに、4ヶ月ぶりの映画館で見たのは「父親たちの星条旗」。
戦争映画だ。
クリント・イーストウッド監督作品。
監督が彼でなかったら、絶対に見なかった。
クリント・イーストウッド、あなたの「ミリオンダラーベイビー」は素晴らしい作品でした。


「父親たちの星条旗」は、日米が戦った第2次世界大戦の末期、
硫黄島での出来事をアメリカ側から撮った作品。
来月公開の「硫黄島からの手紙」は日本側からとられ、
2部作となっている。


感想を書く。


クリント・イーストウッドはものすごく怒ってるんだと思う。
今のアメリカに。
今の世界に。


物語の舞台はは、1945年2月の硫黄島とアメリカ。
硫黄島では日本軍の決死の抵抗にあい、思わぬ苦戦を強いられる。
アメリカ本土では、国民が戦争に嫌気がさしている。
でもホワイトハウスはここで引けない。
戦争は続けなければいけない。
戦時国債を発行し、財政を豊かにしなければいけない。


そこへ1枚の写真が登場する。
荒れ果てた硫黄島に、アメリカ国旗を掲げる海兵隊員の写真だ。


この写真が、冷めていたアメリカ国民の心を刺激した。
愛国心を駆り立てた。
ホワイトハウスは、さっそく写真に写っていた兵士を帰国させ、
英雄として祭りあげ、戦時国債キャンペーンの広告塔にする。


映画は、英雄となった3人の兵士を追っていく。


死と隣り合わせの戦場から、一転して英雄となり、
各地をまわっては戦争激励演説をする。
国債を買ってくれという。
どこへいっても毎夜派手なパーティで迎えられる。


戦場と、華やかなパーティー。


英雄となった3人は、帰国してすぐにキャンペーンに駆り出されたので
親に会うこともなかなかできない。

英雄のなかに、インディアン出身の男がいる。
英雄だ、英雄だ、とちやほやされるが、
インディアンだという理由で、レストランに入店を拒否される。

英雄だ、英雄だと言われ、必死に国債を売るが、
そのあとはもう用無しだ。
英雄といわれた男たちの末路も丁寧に追っていく。

映画では、星条旗を掲げた本当の男たちは別にいたというストーリーも交えて、
英雄とは何かを2重3重に掘り下げていく。


この映画をすごいなと思うのは、「今」この映画を撮ったクリント・イーストウッドの心情にある。

私は日本に暮らしているからわからないけれど、
イラク戦争が始まってから、おそらくアメリカにはたくさんの英雄が生まれた。
9・11のテロの犠牲者も、英雄にされた。
ブッシュ大統領は、イラクとの戦争にあたり、テロで亡くなったアメリカ市民の実名を何人かあげ、彼らがいかに善良で立派であったかを嘆き、彼らの無念のためにも戦おうと宣言した。
実名をあげられた犠牲者の遺族の中には、追悼してくれるのはいいが、戦争肯定のための演説に名前を使うのはやめてほしいと訴える人もあるという。


イラク戦争の英雄たち。


クリント・イーストウッドは英雄を祭り上げて、戦争を続けようとする政府に、ものすごく怒ってるんじゃないかと思う。
英雄って何ですか、
あなたがたの政策にそう人物が英雄ですか?

本当の英雄って何ですかと。


地獄のような戦場と、戦争キャンペーンの派手なパーティー。
その対比。
お酒と音楽と拍手喝さいの裏側で、銃弾におびえる兵士がいる。
もちろん、今日も。
今の世界にも。

日本人としての感想も書いておく。
1945年2月のアメリカって、こんなんだったのかーとしみじみ思う。
とても豊かな国だ。
そのころ日本は、ものすごく悲惨だったはずだ。
国民総出で戦時体制にあった。
学徒動員だよ、
みんな飢えてたよ、節子も飢えてんだよ、
ほたるの墓だよ、
滋養ってどこにあるんですかー!!の世界だよ。


来月「硫黄島からの手紙」が公開される。
戦争映画は嫌いだけれど、やっぱり見てみよう。
だってクリント・イーストウッドだから。

映画のオフィシャルサイトはこちら


過去記事 「ミリオンダラーベイビー」


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Comments

こんばんわ。
TB&コメントありがとうございました。

>クリント・イーストウッドは英雄を祭り上げて、戦争を続けようとする政府に、ものすごく怒ってるんじゃないかと思う。

私もそう思いました。
全編通して彼の怒りが伝わってくるようで
圧倒されましたよ。

Posted by: トミー | 2006.11.21 at 12:50 AM

私も戦争映画ほとんど見ません。
でも、高校生の時だったかな?
4時間半にわたる「東京裁判」を見ました。
日本史選択してたからかな?
見なくては!と、思ったんですね。

この作品も、そう、見なくては!

Posted by: るん♪ | 2006.11.21 at 07:48 PM

トミーさん、こんばんは。
こちらにもお越しくださりありがとうございます。
クリント・イーストウッドが日本からの硫黄島「硫黄島からの手紙」をどう描くのか、気になっています。

るん♪さん、こんばんは。
いや~本当に重いですよ、この映画。(そりゃ軽い戦争映画があっても困るんだけどサ。)
でも戦争映画をあえて1本選んで見るとしたら、血が流れまくる戦場の残酷さと、血を流さなくてすむ場所で戦争をあおる政治家のむごさと、両方をきっちり見せてくれる「父親たちの星条旗」ですね。

Posted by: Nolly Chang | 2006.11.22 at 12:53 AM

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